翻訳の味
コツコツとM・エンデの作品を読んでいます。
『自由の牢獄』を読み終わり、さぁ次の本だと思って『鏡の中の鏡ー迷宮ー』を読み始めました。
この『鏡の中の鏡ー迷宮ー』を読み始めて、いきなり違和感が。
この本の最初のお話は、無限に広い宮殿のような建物に1人で住んでいる男の子の話です。
この主人公の一人称が「わたし」になっていて、「あれっ」と違和感。
以前読んだ単行本では「ぼく」だったはず。
さらに名前が「ホア」になっていて、確か主人公の名前は「ホル」だったような。
というわけで、ちょっと調べてみました。
私が以前読んだのは、1985年に岩波書店から発売された単行本で、翻訳者は丘沢 静也さん。
今回読んだ本は、2019年に同じく岩波書店から発売された、M・エンデ生誕90年記念版で、翻訳者は田村 都志夫さんでした。
翻訳が変わるとだいぶ味が変わるなぁと感じます。
本文中では具体的に主人公の年齢が明かされたり、示唆されたりすることはないので、主人公をいくつぐらいと思って読むかは読み手次第です。
私は、最初に1985年版を読んだ時、「ホル」はまだ小学校低学年くらいと思って読んでいました。
そんな小さな子が、大きな建物の中でずっと1人なのは寂しいだろうなぁと思っていたわけです。
ところが、一人称が「わたし」になると、ぐっと年齢が上がるように感じます。
「ホア」は中学校手前くらいのイメージです。
まぁ「だから読めない!」というわけではなくて、ちょっと雰囲気が変わるなぁくらいです。
今回は読者の想定年齢が少し上なのかもしれません。
この辺は原文を読むと、細かいニュアンスが伝わるんでしょうけど、ドイツ語なんて読めないので。
なので、翻訳をしてくれる人には感謝しかありません。
そして、言葉がわかるだけでは翻訳はできないということもよくわかります。
今回のM・エンデ生誕90年記念版の方も楽しく読んでいます。
翼のある青年の話は、今回読んでもやっぱり面白かったです。